和食っていったい何だろう。その多彩な食材や歴史に迫り、未来を考える特別展「和食~日本の自然、人々の知恵~」(山形県鶴岡市、朝日新聞社など主催)が20日、鶴岡アートフォーラム(同市)で開幕する。2013年にはユネスコ無形文化遺産に登録された和食を、科学や歴史の視点から解き明かす展示は見どころ満載だ。
東京・上野の国立科学博物館で2月下旬まで開かれ、約22万人が来場した特別展の巡回展となる。鶴岡市は12月にユネスコ食文化創造都市10周年を迎えるため、その記念事業として開催した。
展示は2フロアに分かれ、1階で最初に目に入るのは岩石と水の展示。国立科学博物館の国府方吾郎研究主幹は「岩石、地質と水質が非常に関連し、水質が和食と関連していることを見てほしい」という。
その先には山海の多彩な食材がずらり。日本各地の在来種の大根25種の実物大模型が並び、鶴岡の小真木(こまぎ)大根など県内からも3種が登場。キノコや山菜の展示もある。
海の幸は、マグロが泳ぐ姿の実物大模型や魚介類の実物標本、天井には長大な昆布の標本が展示される。発酵やだしに関する説明もある。
2階では、古代からの和食の歴史をたどる。奈良時代の長屋王の邸宅跡から出土した木簡の記述をもとに再現した食卓など昔の食事や、江戸時代の握りずしや天ぷらの屋台などを再現した。時代とともに変化してきた和食を紹介し、食の安全性や環境保護への関心が高まる中、和食の未来を考える展示になっている。
ふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市)館長で、特別展を監修した佐藤洋一郎氏は19日にあった内覧会で「伝統的な農業や在来作物を守っていかないと、この国は守れないという、若い世代へのメッセージも込めた」などと話した。
特別展は6月16日まで、鶴岡アートフォーラムで。午前9時~午後5時半(金曜・土曜は午後6時半)。休館日は月曜(4月29日、5月6日は開館)と5月7日。観覧料は一般700円、大学・高校生420円、中学生以下無料。期間中は、伝統のひな菓子や食器、箸を作る有料講座などもある。問い合わせは同館(0235・29・0260)へ。(清水康志)